嬉しそうに)奥さまがお帰りになりました! お待ち申した甲斐《かい》あって。これでもう、死んでも思い残すことはありませんわい。……(嬉し泣きに泣く)
[#ここから2字下げ]
ラネーフスカヤ夫人、ガーエフ、ピーシチク登場。ピーシチクは薄いラシャの袖《そで》なし胴着に、だぶだぶのズボンをはいている。ガーエフははいってきながら、両腕と胴とで玉突きをしているような仕草をする。([#ここから割り注]訳注 原書には示していないが、ロパーヒンもこのとき登場するらしい[#ここで割り注終わり])
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
ラネーフスカヤ どうするんでしたっけ? ちょっとおさらいして……。黄玉は隅《すみ》へ! 空《から》クッションで真ん中へ!
ガーエフ 薄く当てて隅へだ! ねえお前、むかしはお前といっしょに、ほれこの子供部屋で寝たもんだが、今じゃわたしも五十一だ、なんだか妙な気もするがなあ……
ロパーヒン さよう、時のたつのは早いものです。
ガーエフ なんだって?
ロパーヒン いや、時のたつのは早い、と言ったので。
ガーエフ この部屋は、虫とり草のにおいがす
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