可愛い女
DUSHECHKA
アントン・チェーホフ Anton Chekhov
神西清訳

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)蠅《はえ》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一生懸命|粒《つぶ》よりの

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)いいのよ※[#疑問符感嘆符、1−8−77]

*:注釈記号
 (底本では、直後の文字の右横に、ルビのように付く)
(例)『*ティヴォリ』
−−

 オーレンカという、退職八等官プレミャンニコフの娘が、わが家の中庭へ下りる小さな段々に腰かけて、何やら考え込んでいた。暑い日で、うるさく蠅《はえ》がまつわりついて来るので、でももうじき夕方だと思うといかにもうれしかった。東の方からは黒い雨雲がひろがって来て、時おりその方角から湿っぽい風が吹いていた。
 中庭のまんなかにはクーキンという、遊園『*ティヴォリ』の経営主と持主とを一身に兼ねて、やはりその屋敷うちの離れを借りて住んでいる男がたたずんで、空を眺めていた。

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