る能力を養はせ、すべての知識を知識としてでなく、これを人間の智慧として身につけさせることであります。そして更に、今日特に大切なことは、家の名、家の業に対する誤りのない自尊の念を植ゑつけることであります。
 以上のことは、家庭だけの躾けで十分の効果をあげることはできません。学校も社会も、これに協力すべきはもちろんでありますが、私の考へでは、先づ、それぞれの家庭に於て、この際、次代の国民を育てるといふ重い責任を自覚した上で、是非ともこの方向に一歩を踏み出したいものだと思ひます。
 家庭にこの風が起れば、学校の教育は非常に楽であります。社会も亦、これに応じて変つて来ませう。既に宣戦の詔書渙発以来、国民のゆるぎなき決意と満々たる抱負とは一人一人の表情のうちに読みとれるやうな気がいたします。
 大東亜の指導民族として、この奇蹟にもひとしい、武力を中外に示すことのできた日本人が、他のすべての点に於て、後進諸民族の信頼と畏敬をかち得るために、われわれは、先づ、何をしなければならぬかといふ問題が、既に提出されてゐるのであります。
 経済産業の領域では、それぞれ専門家の腕が振はれるでありませう。
 文化
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