のである。
あとは個人々々の心掛けにあるといふなら、私はそんな無責任な指導ならまつ平ご免を蒙りたい。国民は、政府のためにあるのではなく、国家のためにあるのである。国民の指導は、国家の理想顕現を目標として行はるべきであり、焦眉の急に応ずることを口実として、日本人の生活を精神的に涸渇させるやうなことがあつては、まことに由由しいことである。
本日、私は、はじめて、町内会の常会に出席し、当局の熱心な態度に敬服したが、この伝達事項と、指導の要点が、悉く事務的な今明日の問題のみであつて、辛うじて町内会員の生活現状を維持するに必要な事柄が指示されるだけで、いはゆる「建設の目標」が何処におかれてゐるかさつぱりわからない。かゝる常会の空気は、私には物足りないのである。私は、茲に面倒な理窟を云はなくても、町内会の事業なり、運動の方向なりに、是非とも、「町内の郷土化」更に進んで、「郷土の理想化」の精神が、その片鱗だけでも見えてゐたならと思ふ。
かういふ目標がおのづから町内会によつて示されなければ、一般に「隣組の家族化」は恐らく困難であらう。仮に出来たとしても、それは偶然であり、その家族化は、やがて、旧
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