上胆力と奇略に富んでゐなければならぬ。隊員は、大部分支那人で、隊長の腹心であるとまでわかれば、凡そその活動ぶりが想像できる。
追撃戦の場合など、工兵の来ないうちに、落ちた橋をかけ直して急場の間に合せるなどといふ芸当はこの部隊でなければできぬだらう。それもその筈である。隊長の命令一下、何時どんなところでゝも、苦力の千人や二千人は立ちどころに集められるといふのだから。
保定の南、新楽の町はづれに鉄橋があるが、それと並んで急造の橋がかかつてゐる。「靖郷橋」といふ札が立つてゐる。この鉄橋は退却する敵によつて破壊されたものである。
軍の統一ある治安工作機関として宣撫班といふものがあることはもう誰でも知つてゐるが、早く云へば、場所によつて、その仕事の下ごしらへをしながら前進する半武装部隊である。恐らく、臨機応変の便法として、私設的に編成されたものであらうと思ふが、ともかくこれらの人々も、やはり彼等の信念のために身命を擲ち、効果百パーセントの働きを示してゐることを特記すべきであらう。
保定第二夜
五十嵐君の招待で、私たちは、開店前の酒場といふので牛鍋をつゝくことになつた。
女
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