日本留学日記抄」の中に、次のやうな記事がある。
「十二日。日本人は本当にケチ臭い人間だ。一円何十銭か出して支那料理の一遍も奢つてやるとか、或は、飲食品の一番安いところでも贈つてやると、何度も何度も仰山にお礼を云ふことは請合で、たとへそれから何年かたつた後にでも、何時何処そこでは御馳走にあづかりましてなどと、まだお礼を云ひだすものである。
 私が今度鈴木さんの家に越して来た最初の日に、一箱の白砂糖を買つて鈴木さんにあげようと思つてそれを持つてあの人の前まで行くと、鈴木さんは早速跪いて、何だかよくはわからないが、くどくどとお礼の文句を述べたてられたので、私はまつたく途方に暮れて泣きだしたくなつた。かういふことはわれわれの国では決してみられないことである」
 これでみると、われわれは、やるとか貰ふとかいふことに、そんなにこだはつてゐるのかと、変な気持になる。
 日本語を話さない人はつい黙り勝ちになり、さもなければお互に支那語で喋り合ふといふ具合で、私はやうやく隣席の胡※[#「藩」の「番」に代えて「位」、第3水準1−91−13]棕氏から反共戦線社の事業について説明を聴いたくらゐである。同氏の云
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