の実情からすれば、この二つの部門は、共通な領域を非常に多くもち、基礎知識としては是非とも双方の志望者に与へておかなければならぬ課目が寧ろ大部分を占めてをり、且つ、それぞれ一方の道に進むものでも、他の一方の根本的概念はどうしても頭に入れておく必要があるからである。しかし、必修選択科目として、一層専門的な若干の講義及び実習を課し、演劇は演劇、映画は映画の専攻ができるやうな仕組になつてゐる。
アカデミイとしての理想からはまだまだ遠いには違ひないが、第一着手として、比較的整つた形の研究所にはなると思ふし、経費の点からいつても、個人としては固より、企業会社や特殊の劇団では、これだけの内容を充実させることは実際困難なことは確である。これを独立したものとみれば、年額二万円近い経常費がかゝるし、またいくら金をかけたところで、お義理や形式的に顔をみせる講師ばかりを揃へたのではなんにもならない。この点、今度の企ては、私自身の抱負はもちろん、協力を仰ぐ人達の積極的参加によつて、所期の目的を達成し得るものと確信してゐる。
新設の演劇映画科は、既設の文芸科の一部門とし、全体共通科目としては、哲学、論理、心
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