合、わけても、「社会」一般に呼びかけるやうな問題の説述に当つては、その魅力が言葉の内容から遊離して、奇癖又は仮面の如く滑稽感を誘ふものである。これは、地方の方言のみがさうなのでなく、地方の人々が、標準語そのものと考へてゐる東京弁が、その方言性によつて、同様な結果を見せるのである。
文芸作品としては、阪中正夫君の「馬」だとか、私の「牛山ホテル」だとか、金子洋文君の「牝鶏」その他だとか、何れも、方言の魅力を様々な意味で利用したものであるが、井伏鱒二君に至つては、方言そのものの創作をさへ試みてゐると聞く。さう云へば、誠に文体の創造は、各作家の「個性的方言」の活用に外ならぬ。(「劇作」昭和九年六月)
底本:「岸田國士全集22」岩波書店
1990(平成2)年10月8日発行
底本の親本:「現代風俗」弘文堂書房
1940(昭和15)年7月25日発行
初出:「築地座 第二十三号」
1934(昭和9)年6月23日発行
※初出時の題は「方言の魅力」。
※底本の解説によれば、作品末に記載のある「(「劇作」昭和九年六月)」に、この作品は掲載されていません。初出欄の「築地座 第二十三号
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