文功章
岸田國士

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 こんなことを問題にする必要もないが、二三の新聞雑誌から意見を求められ、一々それに答へる手数を省いたから、ここで一言感想を述べておく。
 勲章といふものは、子供か野蛮人でなければよろこばないものと思つてゐたら、なかなかさうでもなささうである。
 亜米利加の実業家も、仏蘭西の文学者も、勲章が大層好きである。その証拠に、毎年、仏蘭西あたりでは、叙勲の運動が行はれる。ロスタンはルナアルのために運動し、ルナアルは自分が貰ふと、今度は、ベルナアルのために運動した。服の襟に赤いリボンをつけてゐることは、幾分、細君の手前もあるのだが、世間に出て肩身が広いといふ訳である。巴里では近所の眼があるから、避暑に行つた先で、そつと赤リボンをくつつけた古着屋の話を、ベルナアルが書いてゐるくらゐである。
 さて、日本では、役人と軍人――それに少数の金持と貴族
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