り、苦さにみちた述懐がある。しかもそれはもはや決して、消極的傍観的な態度ではあり得ないところに、今度のわれわれの行動の出発があるのであつて、黙々として国民の歩む道が、所詮平坦でないにしても、すべての努力を傾けることによつて、やがては光明に達するであらうことを互に固く信じ合はうとする祈念の衷はれなのである。
 われわれ一行のスケヂユールは文字通り強行軍であつたが、私が病後のからだを多少労はつた以外、他の諸氏はよく頑張つた。そして、いづれも、こんないゝ聴衆はいままでにないといつて褒め、かつ、悦んでゐる。なにかしら手応へがあつた証拠である。
 私はこの運動の意義と効果について、一層これを徹底させる上から、是非、講演の反響を知り、聴衆諸君の自発的協力を望みたいと思ふ。
 次回のプログラムは、さういふ目的が達せられるやう、若干の考慮を払はれんことを計画者側に希望する。



底本:「岸田國士全集24」岩波書店
   1991(平成3)年3月8日発行
底本の親本:「東京日日新聞」
   1940(昭和15)年5月22、23日
初出:「東京日日新聞」
   1940(昭和15)年5月22、23日

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