設けたいのです。即ち、神と人間との間に、「機械」といふものをおき、人間と悪魔との間に「動物」をおきます。機械といふものは変なもので、順調に動いてゐる時は、殆ど人間の想像に余る力を発揮しますが、一たん破損したとなると、無気味な死の状態を呈します。特にこれを神秘的な存在とする必要はありませんが、私は、神に近づかうとする人間のたまたまこの機械に類した相貌を見てぞつとするのであります。恐らく、厳密に云へば、この機械なるものは、神と人間とを結ぶ直線の上にはないでせう。しかし、それは一種の迷路の如く、または陥穽の如く、その道の近くに横つてゐるやうな気がいたします。
 次に、人間と悪魔との間にあるのは「獣」です。獣は、時には、機械と同じく、うつかりしてゐると人間をそこに連れて行くものです。悪魔のやうに術策はないけれども、これとおなじ狂暴なグロテスクな姿をしてゐることがあります。だから、なにをするかわからないけれども、その欲望が単純なところに特徴があります。獣には機械の動きに似た反復する習性といふものがありますけれども、「機械」と全く反対に、自分の目的といふものは「生存」以外にはないのであります。時と
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