文芸の側衛的任務
岸田國士
一
私の考へでは、政治には、広い意味の政治と狭い意味の政治とがあると思ひます。広い意味の政治とは、申すまでもなく、わが国では、これは大政であります。天皇親裁万民扶翼の国家活動であり、その目標とするところは、これを国是ととなへて、国民の一人一人が、大御心を体して国家の隆昌に寄与しなければならぬのであります。一方、狭い意味の政治とは、つまり、政府及び議会によつて運用されてゐる組織的な政策遂行の方法を指すのであります。
そこで、ただ今、内地に於ては政治の新体制が着々具体的な面貌を示して来ますし、なほ満洲に於ても、協和会の運動といふやうな新政治の推進的機関が目覚ましい役割を演じてゐるといふのは、従来の、狭い意味の政治力だけでは、国力の充実発展を促すことは勿論、進んで、目下の非常時局を乗り越え、民族的大飛躍を成功に導くことが困難だといふ一般認識に基くものだと考へられますが、それなら、この狭い意味の政治の欠陥を是正し、広い意味の政治の真の妙諦を発揮するには、国民の一人一人が、どういふ覚悟と努力をしなければならぬかといふ点に、われわれの一番大きな日常
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