文学座第二回試演に際して
岸田國士
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)大人《おとな》
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幹事の一人として一言します。
文学座はおかげで順調に日立ちつゝあることを先づみなさんに報告したいと思ひます。劇団の精神といふやうなものも、次第にはつきりして来ることでせう。これは、宣言めいた空文によつて現はされるものではなく、座員めいめいの仕事に対する熱情と自信から生れて来るものですから、何れは舞台の上で実を結ぶことゝ大いに期待してゐる次第です。
第一回の試演を観て下さつた方もあると思ひますが、劇壇一部の人々は、この試演といふ意味を正当に理解せず、われわれの企図するところを軽率に見逃したやうです。これは間に合せの、ごまかしの、「点取り主義」の新劇舞台に馴らされた眼には、至極もつともなことで、文学座の現在行ひつゝあるトレイニング、基本練習にはさぞかし興味がもてまいと察せられるのです。
しかし、ほんたうの芝居好き、芸術を心で感じ得る人達なら、われわれの稚拙な運動こそ、まことに、新劇が「大人《おとな》」になるための唯一の健康な道であることを認める筈です。
演劇
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