ふ観念が作られ、一応それで通用はするが、実際はそれがために、却つて不都合な事情も生ずるといふやうな結果になつたのである。なぜなら、どんな「文化」機構も、政治や経済からまつたく独立して存在するといふやうなものはなく、一例を挙げれば、「演劇映画」の如きは製作機構そのものが、一つの完全な経済組織と云つて差支ないのである。更にまた、「教育」といふ部門をとつてみても、これは、国家の教育政策に基き、その運営は殆ど行政事務につながつてゐるばかりでなく、学校経営といふ財政的な一面を外にして、教育事業を考へることは出来ないのである。
逆に、政治や経済も亦、「文化」領域と無縁なものでない。政治の立場からみれば、既に「文化政策」といふ言葉もあり、すべての経済機構のなかに、「技術」といふやうな純然たる文化職能が含まれ、かつ、人的資源を擁する以上、厚生に関する諸種の施設を必要とするが如き、これである。
[#7字下げ]二[#「二」は中見出し]
今日の時代に於ては、もはや、如何なる職業も、国家目的を無視して存在し得ず、如何なる職域も、他の職域のいづれもから孤立することは許されない。
従つて、職業そのものゝ
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