なつたとか、勲一等《グラン・クロア》を貰つたとかいふ所謂昇叙の報道がでる。あ、さうかと思ふだけである。
最近私の眼にふれたのは、たしか、ポオル・ブウルジエといふ老大家が勲一等になり、スゴン・ヴエヴエル夫人といふ若くない女優が勲一等になつた時がある。劇評家のエドモン・セエがもう勲三等で十数年前は未だぴいぴいの新進だつたと記憶する。これはなるほど出世の早さうな温厚篤実な劇評家であつたと私はちよつと愉快であつた。
たゞこのレジヨン・ド・ヌウルは日本の金鵄勲章にも旭日章にも瑞宝章にも宝冠章にも、更にまた文化勲章にも相当するものであつて、職業を問はず、官民の区別なく、国家は平等にその国民としての社会的功績を表彰する形式をとつてゐることは、これまた国民性の然らしむるところであらうか。
底本:「岸田國士全集23」岩波書店
1990(平成2)年12月7日発行
底本の親本:「東京朝日新聞」
1937(昭和12)年2月15、16日
初出:「東京朝日新聞」
1937(昭和12)年2月15、16日
入力:tatsuki
校正:門田裕志
2009年11月12日作成
青空文庫作成ファイ
前へ
次へ
全7ページ中6ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
岸田 国士 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング