他の部門はいざ知らず、文芸の領域だけを見ると、殆んどなんらのインテレストを示してゐなかつたことは明瞭であり、従つて、たとへ幾人にもせよ、現代日本を代表すべき詩人、作家、評論家にして、所謂、「文化発達に関して勲績卓絶なるもの」を選び、確信をもつてこれが叙勲を奏請しうるかどうか甚だ疑はしいのである。
もとより、その銓衡は、それぞれ専門的な評議機関を経ることになるのであらうが、その機関とはどういふものであるか、われ/\は先づそれを知りたいと思ふ。なぜなら、この制度が若しもいくらかは西欧諸国の例にならつたものだとすれば、既に私の知る限り、フランスなどでは、今や甚だ香しからぬ結果を示してゐるからである。
なるほど、林首相の「謹話」なるものゝ趣旨を察すると、これは、必ずしも、フランスのレジヨン・ド・ヌウルや、パルム・アカデミツクと類似のものではないやうであり、寧ろその点で、わが国独特の性質を帯びるに相違ないが、それならそれだけに、せめて教養ある国民の「良識」を基礎として、苟も、社会的栄誉の戯画化に陥らないことを予め注意してかゝる必要がある。
といふのは、文学者が一国の文化に貢献するといふ意味
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