編成された全文化機構は、その運用を国家政策に適応せしめることが極めて容易であるばかりでなく、その自主的な活動面に於ても、国民生活日々の糧となり、尺度となり、慰安となり、刺激となり、支柱となるのであります。
 知識はおのづから増し、判断は正確になり、能率が上り、休養足り、娯楽に事欠かず、病弱を忘れ、家庭に憂色なく、隣人相睦むといふ、話のやうな幸福な日が、かくておとづれるだらうといふことをわれわれは信じてゐます。決して空景気をつけようとしてゐるのではありません。
 書物は出版配給の合理化によつて、よい本がみなの手にはいり易くなるでせう。芝居や映画はもつと面白くなり、誰でも見られるやうになるでせう。
 地方農山漁村には、力強い悦びの歌があがり、どんな辺鄙な土地へも、移動演芸隊といふやうなものがしばしば奉仕的に巡廻して行くでせう。衛生施設が着々完備されるでせう。衣食住の問題にしても、これをただ経済的な方面でばかり問題にしてゐる時機ではありません。品は安くても着心地のよい着物の工夫、量は少くても味のよい身になる食物の選択調理、狭い家を上手に住む住み方といふやうな一切の問題が、国民のこの際解決すべ
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