せると共に、それぞれの水準を世界的に高める活溌な働きを奨励援助し、民族永遠の発展と飛躍とを約束しなければなりません。
 この理想は、決して、某々外国の形式的模倣ではなく、わが日本の独自な意志と祈願でありまして、組織そのものゝ性質も、運用の機微も、かゝつてわが民族性の理解の上にたゝなければなりません。
 従つて、各部門の再編成に当つても、徒らに単一組織をでつちあげることをせず、既存の団体の特色ある機能を活かし、必要に応じてこれを純化することはあつても、個々の創造的使命はこれを十分に尊重する方針であります。たゞ従来、同じ専門部門に属しながら、不必要な孤立を守り、有無相通じる道を講じてゐなかつたやうな不合理極まる状態を脱却せしめることが肝要だと思ひます。それと同時に、各専門部門の有機的なつながりがないため、各部門それ自身として一種の栄養不良に陥り、国民文化全体として健全な発達をさまたげられてゐた事実歴然たるものがありますので、これを是非なんとかしなければなりません。
 文化部は逐次、各職域部門の横の連繋と、更に必要に応じ、それぞれの緊密な共同作業とを促進する計画であります。
 かういふ風に再編成された全文化機構は、その運用を国家政策に適応せしめることが極めて容易であるばかりでなく、その自主的な活動面に於ても、国民生活日々の糧となり、尺度となり、慰安となり、刺激となり、支柱となるのであります。
 知識はおのづから増し、判断は正確になり、能率が上り、休養足り、娯楽に事欠かず、病弱を忘れ、家庭に憂色なく、隣人相睦むといふ、話のやうな幸福な日が、かくておとづれるだらうといふことをわれわれは信じてゐます。決して空景気をつけようとしてゐるのではありません。
 書物は出版配給の合理化によつて、よい本がみなの手にはいり易くなるでせう。芝居や映画はもつと面白くなり、誰でも見られるやうになるでせう。
 地方農山漁村には、力強い悦びの歌があがり、どんな辺鄙な土地へも、移動演芸隊といふやうなものがしばしば奉仕的に巡廻して行くでせう。衛生施設が着々完備されるでせう。衣食住の問題にしても、これをただ経済的な方面でばかり問題にしてゐる時機ではありません。品は安くても着心地のよい着物の工夫、量は少くても味のよい身になる食物の選択調理、狭い家を上手に住む住み方といふやうな一切の問題が、国民のこの際解決すべ
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