になりませうか。私の記憶では、二三十年前頃ではないかと思ひます。自然その頃から文化といふ言葉が一般に使はれるやうになりました。
 それならば、さういふ意味で云はれてゐる「文化」といふ言葉を一応考へてみませう。辞書にもさういふ怪しげなものにまで使はれてゐる文化の意味は出てゐません。私の感じから云ひますと、文化住宅とか、文化何々とかいはれる場合の「文化」の意味は、幾分趣味的であつたり、それから便利重宝であつたり、更に安直で見つきがいゝ、といふやうな、まあ、ざつとそんな意味を引つくるめて文化的といつてゐるやうに思ひます。
 西洋的であるといふことゝ、革新的であるといふことゝは、或る時代においては一致してをつたことゝ思ひますが、文化住宅とか文化焜炉とかいふ場合には、必ずしもさういふはつきりした一致は見出されないとして、大体さういふ漠然とした意味が含まれてゐると思ひます。しかし、もう少しその意味がはつきりしたものに、今度は、文化生活といふ言葉があります。
 文化生活といふことになりますと、西洋的な匂ひがすることは勿論でありますが、主として合理的且つ趣味的といふ要素が目立つて来ます。即ち先づハイカ
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