ろ、文化といふ言葉の代りに、文明(シヴィリザシヨン)といふ言葉を使つてゐるくらゐであります。
それはさうと「文化」の定義でありますが、これを哲学的に考へると、いろいろむづかしい言ひ方をしなければなりませんが、なるべく平易な言葉を使へば、「人間の一切の精神力の開発と、その調和的な発達」と云つてもよく、また、「人間がその理想を追求するために工夫努力する一切の生活表現」と云つてもよろしいのであります。以上は広い意味の「文化」でありまして、政治も経済も、軍事も外交も、教育も宗教も、その他、日常生活のすべての内容がこれに含まれるのであります。ところで、狭い意味の文化といふことになると、人間の精神力が最も純粋な形で高度に発揮された技術的な「働き」、「営み」を指すのであつて、これは大体、学術、芸術、道徳、及び宗教の四つを内容とし、これが個々に在るのではなく、統一されたかたちで一つの価値を作るところに、文化の本質があるといふ風にみるのであります。
学問的な説明はこれくらゐにして、ごく一般に使はれる言葉として、「文化」の意味をくだいて云へば、「国民としての理想を達成するために、われわれが絶えず伝統の
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