としては西洋からはひつて来たものだけれども、その実体は決して西洋にのみあつて日本にないものではないといふことをこゝではつきりさせておかなければなりません。つまり、西洋には西洋の「文化」があり、一口に西洋文化と云つても、それぞれの国に固有なものと、多少相通じるものとがあるやうに、同じ東洋のなかでも、特に日本には日本固有の「文化」があるのであつて、たゞ、日本では、西洋で考へるやうに、ひとつの特別な概念として、それを昔から一定の言葉であらはしてゐなかつたといふだけであります。
さういふ例は、ほかにいくらでもあります。
さて、それなら、「文化」といふ言葉をわれわれはどう解釈したらよろしいか。これも、参考のために西洋の原語についてしらべてみると、これはラテン語の「耕す」とか「栽培する」とかいふ意味の言葉から出てゐるので、つまり、人間の生活を土壌にたとへ、これを原始の姿から理想の姿に高めるために、あらゆる工夫努力を加へる、その過程を指すのであります。
ところで、その人間生活の理想の姿なるものが、西洋と東洋とでは、根本に於て多少違つたところがある。殊に、わが日本は、肇国以来、厳然と定まつた国家
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