これで大体「文化」といふ言葉の解釈は尽きたやうです。
近頃、この言葉はあちこちでやゝ乱雑に使はれてゐますから、よほど注意しないと、なんのことかわからない場合があります。
それをこゝで少し拾つて、説明のつくものは説明をしておきませう。
先づ近頃「新体制」といふことが云はれてをります。云はれるばかりではない。着々、実現してゐるのでありますが、これは国家機構のすべてに亘つて、国防上必要な、従つて永久にわが国土と国民生活を揺ぎなきものとするための新しい改革を行ふことでありますが、これを政治と経済と文化の三つの面から考へて、それぞれ、新体制の機構を作つてゆかうとしてゐるのであります。
そこで、政治と経済の機構については、例へば政治は、政党が解消して新たに翼政会といふ単一政事結社が出来、行政官庁の整理改廃等が行はれ、経済界は経済界で、重要産業に関する統制会が出来るとか、中小商工業の転業問題に手をつけるとか、いろいろの動きがあります。そしてその範囲もわりにはつきりしてゐるのですが、文化機構といふことになりますと、どうもその範囲が茫漠としてゐて、なかなか纏りがわるいのです。ごく大ざつぱに云へば、さつき「文化」の内容として挙げた、学問、芸術、道徳、宗教に関する職域でありませうが、それだけでは具体的に、文化職域といふものを網羅できません。それで、一応、職域或は職能といふ立場から、文化部門と考へられるものを列挙してみると、次の通りです。
学術部門
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自然科学者、人文科学者
[#ここで字下げ終わり]
芸術部門
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文芸家、美術家、音楽家、舞踊家、演劇人、映画関係者、芸道家
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教育部門
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大学専門学校教師、中等学校教員、国民学校教員、特殊技術学校教師、特殊学校教師(聾唖学校等)、職業技術教師、保姆、其他社会教育関係者
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言論部門
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評論家(思想、芸術、社会等)
[#ここで字下げ終わり]
宗教部門
[#ここから1字下げ]
神道教師、僧侶、牧師
[#ここで字下げ終わり]
公務・法務
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官吏、公吏、陸海軍人、公共団体職員、法務従事者
[#ここで字下げ終わり]
出版・報道部門
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出版者、新聞記者、編輯者、放送局員
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