トゐる。これにはつまり、仏蘭西劇に様々な舞台的伝統があつて、その伝統を守り続けるといふ趣旨がコンセルヴァトワアルの名を生んだといはれてゐる。
このデクラマシヨンなる一科は、今日、日本の旧劇修業の課程中にも含まれてゐることと思ふ。で、これは先づ問題外とする。
「物言ふ術」は、例へば、発声法、発音矯正、呼吸調節、顔面表情、科《しぐさ》との関係、それから最後にテキストの修辞的及び心理的研究、かう進んで行くのであるが、結局は言葉の抑揚(Inflexion)に於ける「絶対的正確」を期するに在る。この抑揚は想念の複写そのものでなければならず、「殆ど正確」であることが既に、最も避くべきことなのである。
「物言ふ術」の「こつ」ともいふべきは「句」の中に含まれる「語」の価値判断である。固よりこの場合、人物の性格的心理条件を基礎としての話である。
然るに、未熟な、又は無能な、或は怠惰な俳優の多くは、この価値判断の努力を惜むか、或は、理解力の薄い結果、常に動詞又は形容詞に「力点」をおいて抑揚をつけるといふのが、この道の研究者の新発見である。日本ではどうだらう。
「物言ふ術」が俳優の演技に於ける根本的に
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