に遅れたものは月給の百分の一。
登場遅刻――百分の二。
指定の扮装を違へたるもの――百分の二。
台詞を違へ、動作位置を誤りたるもの――百分の二。
稽古中
登場遅刻又は忘却――千分の二十五。
十分間遅刻――千分の四十。
十五分遅刻――千分の五十。
二十分遅刻――千分の六十。
三十分遅刻――千分の七十五。
稽古全部欠席――百分の四。
――此の割合は、稽古の最後の四日間に限り三倍とす。
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一寸、厳しいですね。
稽古は一日四時間以上はしない規定になつてゐる。そして午後一時半から八時までの間に於て行ふことになつてゐる。興行時間を最大限四時間(普通二時間半乃至三時間半)としてゞある。
但し、最後の二日に限り、一時間だけ延ばしてもいゝ、つまり五時間やれるわけである。
稽古中は、少くとも一日十法の割増手当が出る。
閉幕後、即ち夜の十二時以後に、次回興行の稽古をやる場合は、最初の一時間は十五分について、三法以上、次の一時間は、十五分について四法以上の割増がつくわけである。
細かくきめたものである。それくらゐにして置かないとね、なかなか……。
月二千法以下の収入しかない俳優には、舞台用の現代服も劇場から支給する。時代服、職業服、並に様式服は勿論のこと。
月千法以下のものには、舞台用の靴、靴下、シヤツまでも支給する。舞台用と限つてあるからには、それを着けて外へは出られない。少々不便である。
病気又は懐姙の場合は、之を理由として俳優を解雇することは出来ない。
懐姙の為め休業中は、一日十五法以上の手当を給料の代りに与へる。
病気は、十五日間を限り、これまた給料の代りに十法以上の手当を給する。
或る寄席(ミュジク・ホオル)で、一人の歌劇女優を傭入れた時、その契約書に、こんな文句を書き入れてあつた。
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「×夫人は、閉幕後と雖も、午前二時まで劇場に在るものとす。
夫たる×氏は、閉幕と同時に、如何なる事情あるも劇場を退去すべきことを契約す」
[#ここで字下げ終わり]
乱暴ですね。言語同断ですね。
既婚の婦人は夫の認可なくして劇場に傭はれること、また劇場側から云へば、傭入れることは出来ない法規がある。
十三歳以下の子供は舞台に立つことを許されない。
俳優は、新作の上演に当つて、その稽古の程度不
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