芸術を論じ、杯を傾け、盛んに唄ひ盛んに感激した。その集団の一つに文学者、美術家、音楽家よりなる「影絵の会」があり、彼等はこれを「黒猫座」と命名したのである。
此の黒猫座と雑誌『巴里生活』の合体から生れた一つの芸術上乃至生活上の虚無主義、楽天的虚無主義、これが文学の方面に於て次第に趣味的の洗煉を経、極めて都会的な、通人的な内容と表現様式を生み出し、そこから、戯曲の方では二十世紀初葉より今日まで、兎も角も世俗的勢力を保持しつゝある世相喜劇の、屈託なき、時としては安価な人生観を作り出すのである。
劇作家としてのモオリス・ドネエは『情人』一篇によつて早くもパリジャニスムを代表する作家となつた。彼の才気はその美貌と相俟つて、巴里社交界の人気を一身に集めてゐると云へば足りる。
『プリオラ侯爵』『決闘』等の作者、アンリ・ラヴダンは、ドネエほどのすつきりした才気はないが、一種の「道楽者」を描くに非凡な筆を持つてゐる。たまたま社会問題に触れても、「お芝居」の面白さ以上のものを与へ得ない。
が、此の二作家は、単独に批評される場合には、もう少し褒められてもいゝ作家であらう。
ジャン・リシュパンは、比
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