態度はどうであつたか? かういふ問題をあゝいふところまで引つ張つて行つたのは、誰の責任か? ほんたうに云ひたいことを適確に云ひ表はす訓練のない人たちの責任だつたのである。

       七

 私が遺憾に思ふのは、国民に道徳心がないといふやうな途方もないことではない。お互の間に、心から心へ呼びかけるところの共通なひとつの新しい風俗がもうそろそろ出来なくてはといふことである。
 国民一般は、そのために、互に不信の眼をもつて対し、神経を不必要に浪費し、軽蔑に値しないことを軽蔑し合ひ、外国人の誤解を招き、予期しない国家的損失を蒙るのである。
 それなら、かういふことが一朝一夕で改まるかといふと、さうはいかぬ。しかし、道徳的標語をもつて国民の総力を動員しようとするのとそんなに変りはない。しかも、一旦成功すればずつと永続性があり、また国民相互の自発的協力によつて十分魅力ある運動となり得るであらうところに、私は大きな希望をつなぐのである。
 国語の整理統一、生活改善、都市計画、娯楽施設、文学芸術の利用、その他一切の文化部門に於ける活動の眼目をこゝに置くことは、わが国の現状として、まさに緊急事であ
前へ 次へ
全18ページ中12ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
岸田 国士 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング