沈黙は、その言葉の死せる如く、「活きてゐない沈黙」である。「価値なき沈黙」である。――それでも、「死の如き沈黙」といふではないか。――さうですね、然し、その「死」が活きてゐなければなりません。――夜食を終つて寝につくまで、たつた一時間、髪薄き老妻の繰言は途切れ途切れ、汚点《しみ》だらけの襖の影に巣喰ふ焦《いら》立たしき沈黙こそ、此の世の不幸である。
底本:「岸田國士全集19」岩波書店
1989(平成元)年12月8日発行
底本の親本:「演劇新潮 第一年第八号」
1924(大正13)年8月1日発行
初出:「演劇新潮 第一年第八号」
1924(大正13)年8月1日発行
入力:tatsuki
校正:Juki
2006年2月20日作成
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