も、新しい思想によってそういう誤った観念を一掃しなければならないけれども、また俳優自身としても、企業家に対してそういう頭を以て臨んではならないと思います。
演劇、映画の企業形態というものは現在いろいろあって一概にはいえませんが、結局演劇乃至映画の企業家と俳優の関係は、全く他に例のない特殊な関係なのです。それが特殊な関係であるということは、今日までいろいろな例でみなさんも御承知と思うが、この間に一つの新しい道徳というものが、ここで作られるのでなければならない。これはみなさんには、そういう問題が今後あるということだけ頭においていただいて、そういう道徳とはこういうものだということについての私の考えは、ここではいわないことにします。
その次は同じ芸術家であり技術家である演出家――演出家と俳優との関係。演出家というのは、いわば音楽の演奏に於けるコンダクターのようなものであると私は思う。しかし、今日の日本の実情に於ては、このコンダクターは、同時に多くの場合、教師をかねているのです。だが、この関係は徐々に変ってくると思う。必ずしも演出家は俳優の先生ではなくなる時代がくると思う。先生ではなくなるが
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