にその人を得るかどうかといふことであるが、それは実際やつて見なければわかるまい。一番困るのは科白の実際的指導であるが、これは、どうしても、既成の俳優に委せたくない。多少無理でも、演出家として経験ある新人に依嘱するより外あるまい。
なほ、私としてこの学校の組織に関しては、相当具体的の案を有つてゐるが、それはいつかの機会に述べることとして、今はただ、この種の学校を設立するのが目下の急務であるといふ輿論を喚起することができればそれでいいのである。
政府は既に、音楽学校と美術学校とを管理してゐる。差当り、音楽学校を拡張して、演劇科を設けるくらゐの進歩振りを見せて欲しい。
なほ、日本に於ける唯一の権威ある演劇研究所たる築地小劇場が、如何なるメトオドによつて「新しい俳優」の養成に当つてゐるか、機会があつたら、それを知りたいと思つてゐる。若し差支へがなかつたら、適当の時機に於て一般演劇研究者、殊に真面目な俳優志願者のために、同劇場の俳優教育方針及びその機関について、詳細を発表するやうにして欲しい。これは単に、同劇場の真摯な努力を語る好宣伝であるばかりでなく、五里霧中の新劇界に一道の光明と、正しい刺激とを与へることに役立つであらう。
底本:「岸田國士全集20」岩波書店
1990(平成2)年3月8日発行
底本の親本:「現代演劇論」白水社
1936(昭和11)年11月20日発行
初出:「演劇新潮 第一巻第一号」
1926(大正15)年4月1日発行
入力:tatsuki
校正:門田裕志、小林繁雄
2006年2月18日作成
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