巴里素描
岸田國士
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)糞《メルド》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)|星の広場《プラス・ド・レトワル》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから3字下げ]
−−
ヴォルテエル河岸
霧雨。――外套の襟を立てる。
――いくら……これ?
――ラ・ハルプの文学史……六十法。
――さよなら。
小蒸気の笛。
――危ない、滑りますよ、奥さん。
サン・ミシェル街
新調のズボンが短か過ぎる。
(また、一人で飯を食ふのか)
――おい、どうした。
――うるさい。
マロニエの若葉の匂ひ。
ルュクサンブウル公園
朝から噴水を見てゐる。
玩具のヨットが波を切る。
母親の若い日傘が眩しい。
(昨日の希望……明日の憶ひ出……)
(あいつの瘠せ方はどうだ)
(畜生! 新聞の盗み読みをしやがる)
さあ、いらつしやい、いらつしやい。お子供衆のお慰み……ポリシネルの大活躍……。木戸はたつた十銭……。
モンパルナスの基地
次へ
全6ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
岸田 国士 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング