かすかどうか? そこには若く未熟でも、健康な文化の実が結びつゝあるかどうか?
今ゐる神戸の宿は、海港都市の最もそれらしい雰囲気のなかにある。
この種の雰囲気は、国際的といふよりも寧ろ異国的な情趣に満ち、それがわれわれ日本人の立場からさうなのではなく、自分を西洋人の側においてさう見るやうな習慣がついてゐるのに気がつく。
これは変な錯覚であるが、こゝにある日本的地方色は、私の眼には単なる東洋植民地色なのであつて、これこそ、私の国民的矜りが強ひてさう感じさせるのかもわからぬ。
日本は、この侵入によくも持ちこたへたものであると思ふ。それにしても、もうひと息である。戦ひの最後の五分間が近づきつゝあるのである。(昭和十五年十月)
底本:「岸田國士全集25」岩波書店
1991(平成3)年8月8日発行
底本の親本:「生活と文化」青山出版社
1941(昭和16)年12月20日
初出:「文芸春秋 第十八巻第十三号」
1940(昭和15)年10月1日
入力:tatsuki
校正:門田裕志
2010年1月20日作成
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