仕掛けがありますから何方らで上げても同じであります。何でもないのですが、さうすると其時に舞台監督たるマネーヂヤーは、幾ら力が強くても片手ではまるで嘘見たいだから両手で上げたら宜からうと云つたら、其時に俳優は何方らにしても、家を持ちあげるのは嘘にきまつてゐる。力を強調するためには、片手の方が効果的だと云つて、それ以来其の芝居は片手で家を持上げる様になつたと云ふことであります。其次に早変り。之は一人の俳優が二人の役をするのであります。之は西洋にもあります。早変り専門の俳優と云ふものがあります。座頭と云ふ盲人の音楽家が或る場面に出て来ます。木琴を鳴し歌を唄つて出て来ます。其の盲の音楽家は由緒正しい武士の変装したものである。それが早変りの場合に目の前にあつた池の中に飛び込む。其の瞬間後の方から立派な武士が出て来まして、実に目にも止まらない早業で池の中に飛び込むと、直ぐ後から立派な武士が出て来ます。それが早変りであります。俳優がそれを非常に巧くあつと言ふ間に変りますと当時幕府からお小言が出て、何かバテレンの法を使つてゐはしないかと云ふことで警邏の者が調べに来たといふことであります。其次に人形振と
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