てゐるといふ、極く要点だけをかい摘んで簡単にお話します。元来能狂言にしろ歌舞伎にしろ其の研究には相当の時間を費さなければならないほどの材料があります。それをたつた五分か十分でお話するのでありますから、どの程度の事が皆さんの頭の中に入れて戴けるか疑問でありますけれども、恐らく何かしら其の入口を指示することが出来はしないかと思ひます。先づ能狂言と云ふのは、日本に於ける本格的な演劇と云ふものが完成された其の最初のものであります。本格的な演劇とはどう云ふものかと云へば、詰り戯曲のテキストがあつて、それに依つて俳優が舞台の上でそれぞれの役を演ずると云ふ形式の備はつたものであります。能狂言はさう云ふ形式のものが日本にできた最初のものであつて、能と狂言とは同じ舞台で演ぜられました。併し其の劇としての内容は全く趣を異にして居りまして、恐らくこの能と狂言とはその起源が可なり前から分れてゐたものと思はれます。能と云ふものは楽劇式、音楽を使つた芝居、楽劇式の芝居で悲劇である。狂言の方は仕草で以て演ずる喜劇であります。之は双方共それを作つた作者もまたそれを演ずる役者も別でありまして、丁度之は西洋の古典喜劇と古
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