島国的僻見
岸田國士
日本がだんだん欧米化しつゝあるといふ見方は、或る意味で肯首できるけれども、それを悦ぶものも、それを嘆くものも、もう一段高い処から見て、総ての民族が世界化しつゝあるのだと思へば、人類の超国境的進化を認めないものゝ外は、さまで、日本のみが特殊な境遇に置かれてあると信じる必要はあるまい。
事実、現代の日本人は「多少とも」英吉利人であり、独逸人であり、露西亜人であり、仏蘭西人であり、亜米利加人であるのだ。然し、それがために、だんだん日本人でなくなると思つてはいけない。
現に、「多少とも」東洋人に、乃至は日本人になりつゝある欧米人もあるやうに見受けられる。
各国の文学が、その特色よりも、共通な或る標準によつて批判され、翫味されようとする時代が来てゐる。
然しながら、まだ、それぞれの国は、その文学に、他国人の味ひ得ぬ味を保有してゐるやうである。殊に、欧米と東洋、殊に日本との間には、文学的審美観念の隔りが可なり大きい。それでも、われわれ日本人は、五十年前から較べれば、「多少とも」欧米の文学を、その国の人の如く味ひ得るやうになつてゐる。それは、前に述べたやうに、われわ
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