ることを銘記しなければならぬ。かくのごとき日本文化の正しき伝統は、外来文化の影響の下に発達した中央文化のうちよりも、特に今日に於ては地方文化の中に存し、これが健全なる発達なくして新しき国民文化の標識を樹立することは不可能ともいふべきである。地方文化振興の意義と使命はこゝにあるのである。
かくして、以上のごとき国民文化新建設の根本理念は同時に地方文化刷新の指導理念にほかならぬが、特に地方文化振興について、その指導的目標をあげれば左のごとくである。
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第一には、あくまでも郷土の伝統と地方の特殊性とを尊重し、地方地方がその特質を最大限に発揮しつゝ常に国家全体として新たに創造発展することを目標とし、中央文化の単なる地方分布に終らしめざること。
第二には、従来の個人主義的文化を止揚し、地方農村の特徴たる社会集団関係の緊密性を益々維持増進せしめ、郷土愛と公共精神とを高揚しつゝ集団主義文化の発揚をはかり、以て我が家族国家の基本単位たる地域的生活協同体を確立すること。
第三には、文化および産業、政治行政その他の地域的偏在を是正し、中央文化の健全なる発達と地方
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