また、人生の過程に於て、一つの端役を受持つことで満足しよう。あらゆる世相の波紋は、あらゆる人間の「役不足」から生じてゐる。
 例へば、政治がさうである。如何にその「楽屋」の騒然たることよ!

 更に、また、私たちは、あらゆる運動《ムウヴメント》の、殊に、かの社会革命の、極く小さな役割を演ずることで満足しよう。「舞台裏」の仕事をするものがあつてもいゝだらう。
「第一線」に立つ人々よ、明るい舞台で、しつかり見得を切り給へ。大向ふをうならせ給へ。私たちは、幕の蔭でゆつくり煙草でも喫つてゐよう――もう、スヰッチはひねつてある。



底本:「岸田國士全集20」岩波書店
   1990(平成2)年3月8日発行
初出:「文芸時代 第四巻第四号」
   1927(昭和2)年4月1日発行
入力:tatsuki
校正:門田裕志、小林繁雄
2005年10月6日作成
青空文庫作成ファイル:
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