……。
田所 船乗りなんて、みんな子供みたいなもんですよ。
悦子 それでゐて、何時かは、麦酒をあんなに滅茶にお飲みになつて……。
田所 あれは初郎君がわるいんだ。先生は人をおだてる名人でしてね、煽動家ですよ。うちの船長がその手に乗つて、たうとう黒ん坊の女と寝たつて話……あ、いけねえ……。
一寿 何とね?
悦子 いやねえ、黒ん坊の女とですつて……。
一寿 ああ、君がかね。
田所 いや、僕の話ぢやないんです。ああ、もうよさう。どうもたまに陸へ上ると、頭の調子が狂つて来やがる。
一寿 ああ、君、なんか特別な話があるんだつたね。こいつがゐちや具合がわるいか。
悦子 あたしはもう引込むわよ。明日の準備もありますし……では、ごゆつくり……。
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悦子が奥へはいると、両人はしばらく、黙つて煙草を吸つてゐる。
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田所 どうも、少し、切り出しにくいんで……。
一寿 さあ、遠慮なく云ひ給へ。但し、僕の力に及ぶことかどうか……。
田所 それが問題なんですが、ぢや、はつきり云ひます。実は、愛子
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