ましたけれども、実に無関心だつたと思ひます。議会でも、さういふ問題が出たことは絶対にない。偶々議会でさういふ文化とか、文学とか、或は芸術とかいふ問題が出ると、議場に嘲笑が起るといふ現象をたびたび耳にするのですが、つまりさういふことを云ふ議員は非常に野暮な議員だといふ風に考へられる。かういふやうなことが青年の思想には非常に鋭く響くわけです。幸にしてかういふ大政翼賛運動が起る新たな体制になつて、われわれが協力努力すれば、社会といふものはもつと理想に近いものになる途がついた、といふことが云へると思ひます。

 転向者の待遇といふ問題については、当人が既に十分日本人であるといふ自覚をもつてゐるものならば、これは是非とも協力させる場所を与へなければならないし、全国民の力を一つに合せやうといふ、翼賛会の運動の建前から云つても、さういふ人々を積極的に抱擁して行かなければならぬものと私は思つてをります。そして翼賛会自身が大きな自信をもち、国民の具体的な支持の下に軌道に乗つて来れば、勿論さういふ人たちを採用できるのぢやないかと思つてをります。さういふ時期の来るのを待ち、また早く来ることに努力してみたいと
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