ずる、その根柢をなす国民の力であるといふ点を、十分お考へを願ひたいのであります。実際に於て、今度の翼賛会に文化部が出来たことに就てはいろいろ意味がありますが、とりわけ今日知識層の一部の中で、比較的今まで拗ねてゐた者、或は懐疑的であつた者が、これに依つて何か非常に新しい希望をもつて、今までの自分の態度を一擲して新しい翼賛運動に参加したい、さういふ熱意を示してゐる者の多くなつたことは事実です。これは愈々日本の政治にも文化といふ部面がはひつて来たといふ、さういふ希望の現れだと思ひます。その態度そのものはまだ余り賞められませぬが、兎に角、さういふ微妙な点もあると思ふのであります。

 元来日本民族は科学性といふ点に於て、弱点があるやうに云はれてをりますが、日本民族そのものは科学性をもたない民族ではないと思ひます。徳川時代の政策は科学圧迫といふ点に非常に力が入れられたものですが、これが明治時代になつて、科学に対する泰然たる欲求となつて現れて、つまり科学といふものを不消化のまゝ呑み込んで行つたわけです。科学がまづさうですが、何事に依らず、日本にはないが外国にはある、かう思はせることがいけない。要す
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