を食ふといふことは、凡そ最近の新劇関係者間には行はれてゐないことでありました。
さういふ機会が若しあつたとすれば、われわれ皆なが口を揃へて、「新劇はつまらん」などと、世間に向つて云へた義理ではないのであります。
ところで、めしの時間まで、少し暇をおきましたのは、話よりめしの方に気を取られるといふ心配があつたからではなく、一円の料理では、さう皿数を重ねるわけにも行くまいと思つたからであります。
で、それまでの時間を利用して、皆なさんに、いろいろの御意見を伺ひたいと思ひます。
どなたかに、急に司会者の役をお願ひしたいのですが、急にお引受け下さるかどうかわかりませんから、これまた僭越ながら私が進行係を勤めます。
予め一つ提案をいたします。この席へは、何人も義務を負ふて出席してゐるのではありません。で、討論を避けたいと思ひます。但し、質問はこの限りに非ずといたしては如何でありませう。
それからもう一つ、めいめい自己紹介をする必要があると思ひます。そちらから次々にどうぞ。
議題といつては大袈裟になりますが、最初のことでありますから、お話の中心を一つきめておきませう。
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