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何と云つても、一劇団の主体を形造るものは、俳優である。新劇協会は、現在著しい不具者である。劇団として、ほんたうの仕事を初めることはまだ出来ない。故に、先づ、完全な劇団の組織を目的として、徐々に必要な手段を講ずる訳である。「これでいゝ」といふ時機は、非常に遠い将来であるかもわからないが、われわれとしては、たゞ、戯曲のインタアプレエトとしての俳優の素質を、より合理的な方法によつて、より速かに向上させることを努めたいと思ふ。
所謂「新劇」の為めに、進んで経済的支持者たらうとする特志家を得たことは正に劇壇の快事である。此の機会は、逃すべきではない。不明を顧みず、敢て委嘱に応ずる次第である。
之を文芸春秋社の事業と見るもよし、また新劇協会の仕事と呼ぶもよし、更に之を、某々等の新劇運動と称するもよしであるが、実は、現代の機運が此の計画を生ましめたものである。そして、此の計画の実行は、われわれ数人の力によるのではなくて、若き時代の熱意そのものに外ならない。
底本:「岸田國士全集20」岩波書店
1990(平成2)年3月8日発行
初出:「演劇新潮 第一巻第八
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