証できるか。
 彼等の仇敵視する
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二、ブウルジュワ作家一派。その中に、彼等の最も信頼すべき味方を発見する日があるであらうと同時に、その思想といひ、その生活といひ、その趣味といひ、一から十までブウルジュワ的な作家が幾人かあることはある。それらの作家は、その作品の中で、その思想を暴露し、その生活を語り、その趣味を表はしてゐる。彼等は思想的に、ブウルジュアジイの弱点を擁護する反動的態度を明示してはゐないが、所謂「現代を呼吸せざる」作家の通弊として、時代の歩みに鈍感であり、「幸福」の観念にわれわれと相通じないものがある。道徳の仮面を着た「獣」であるのは已むを得ない。この種の作家は、今や多く新劇界から忘れられようとしてゐるから、さまで顧慮するに足らぬ。
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 これ以外に、更に分類のし方もあると思ふが、これら様々の傾向から生れる作品、舞台に接して、その優劣を批判し、好悪を定め、取捨選択を行ふのは世人の勝手である。単に無責任な泥の塗り合ひによつて、その何れにも幻滅を感じない用意が必要である。



底本:「岸田國士全集20」岩波書店
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