の意見と関係なくではあらうが、俳優学校の創設を提唱し、鋭意、その機運の促進に努力してをられるのを見て、衷心、悦んでゐる次第である。
 私も、今後、同氏の驥尾に附して、この問題を研究して見たいと思ふ。

 さし当り、今度、文芸春秋社が、新劇協会を経営することになり、畑中蓼坡、伊沢蘭奢の諸氏を中心に、一層充実した劇団を作る計画を発表したが、私も先輩友人諸君の勧誘もだし難く、一部分の仕事を担任することを承諾した。それについて、私の第一に持ち出した意見は、現在の俳優を以て、如何なる組織の劇団を作らうと、それで、「今までのものより優れたもの」を見せることは恐らく不可能である。劇場との契約その他の事情で、今すぐに公演することを余儀なくされるにしても、その事業は、総て、近き将来に於ける俳優養成機関の樹立に役立たなくてはならない。この問題を除外して、今われわれが「舞台の仕事」にたづさはることは、殆ど無意味である――といふことであつた。
 実際私は、自分の健康が許すやうになれば、具体的の案を提げて演劇学校創設の運動に着手するつもりである。
 その演劇学校は、俳優のみならず、演劇に関する諸種の部門を専門的
前へ 次へ
全9ページ中6ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
岸田 国士 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング