い男の人です。
州太  二十六七……三十六七だらう。
新井  いゝえ。だから僕、少し変だと思つたんですけれど、土地を御覧になりますかつて訊いたら、あゝ土地も土地だけど、それより先に、丹羽さんの事務所へ案内してくれつて云ふんです。

[#ここから5字下げ]
とねが、麦酒の代りをもつて出て来る。その後から、則子が続いて現れる。
[#ここで字下げ終わり]

[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
州太  やあ、あんたも来てたのか。そいつあ賑やかでいゝ。さあ、お祝ひだ、一杯どうです。
則子  なんのお祝ひでせう。
とね  さあ、なんかの前祝ひでせう。注ぎますよ……。(注ぐ)
州太  だが、実に愉快だ。誰にも想像がつかんだらう。このわしの頭の中は……。(則子に)あんたのお父さんなんか、眼前のことばかりしか見えんが、ちつとさう云つておやんなさい。人間は、自分のことを第一に考へちやいかんつて……。わしは、第一に、娘のことを考へてる。第二には、世の中のこと……。それから、第三に、自分だ……。
則子  それで、奥さんのことは……?
とね  第四よ。
州太  いゝや、それが間違つてる。二葉に訊いて御
前へ 次へ
全75ページ中44ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
岸田 国士 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング