とについて今日までいろ/\な論議が行はれ、まだその燻ぶりが多少あらうと思ふのでありますが、これはまたの機会にはつきり国民の文化的能力といふものが、戦争完遂に欠くべからざる一つの要素であるといふことを、申しておきたいと存じます。
即ち道徳、科学、芸術――この総力を結集し、そしてその上に大きな国家的目的をもつてこれを貫くところの国民文化能力が生ずるのでありまして、溌剌強靭なる生活力といひ、雄渾高雅なる「国ぶり」といひ、これが国民文化的能力の発露であります。文化は民族の理想を目指して、生々育成された一切の生活表現でありますし、また文明は、一面において人類の欲望から生れた智的所産とも云へるので、この混同が今日まで往々にして、文化運動乃至は文化といふものについて誤解を生んでゐるやうに、私は思ふのであります。
健全なる文化の基礎がなければ、文明も常に民族発展の方向を誤り自縄自縛、遂に神の怒りにふれるのだと思ふのであります。欧洲文化の没落がこれを証明してゐます。しかしながら、人類の進歩乃至国家の繁栄にとつて一面、自然のある程度の変形、または技術の高度化といふことが、どうしても必要であります。この
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