である。
 しかしながら、政治の性格なるものは一朝一夕に改変し得るものでない。諸君は辛抱強く待たなければならぬ。待つといふのは手を拱いてゐることではない。求めるものは大いに求め、営々来るべき日に備へ、われわれが成し遂げ得るであらうことを倶に成し遂げてくれなければならぬ。
 大政翼賛運動の標語は「臣道実践」である。国民としての青年の道は、それぞれ職あるものは職に励み、学窓にあるものは学業にいそしむことにありとはいへ、たゞそれだけのことなら、今更めて云ふ必要はないのである。私が、特に、この時局下に於て、青年に期待したいのは、わが日本のため諸君が心から欲するところの「生き方」をまづ主張せんことである。日本人として、かく生きねばならぬといふ、ひとつの精神がそこに見出され、かく「生きる」ことを熱望する意気が、諸君の先輩を動かしてこそ、日本の新しい政治ははじめて軌道に乗るであらう。
 政治を論ずることがまだ早いと云はれるなら、諸君は、なんの躊躇もいらぬ。率直に、大胆に、「生活」を論ずればいゝ。日本が強く、正しくあるために、諸君は今日の日本人がこのまゝではいかぬといふことを誰よりも痛切に感じてゐる筈
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