べき時機ではありますまい。
 たゞひとつ、青少年の服装について、世間があまり親切でないことを、私はいくぶん心配してゐるものです。材料に制限のあることは、これは已むを得ませんが、せめて、制服の仕立をもう少し注意して、からだに合ふやうにするとか、それも無理なら、軍隊のやうに一装二装に別けるとか、特に帽子の被り方、靴の手入など、そこまでの母親の心遣ひがみせてほしいと思ひます。
 それから、大学や専門学校の、学生のあの制帽と詰襟の制服に、背広型の外套を着た姿は、決して見よいものではないといふことを、どうして誰も気がつかぬのでせう。近頃、襟巻は外せといふ声を聞きますが、これも外套を詰襟にすれば自然に解決する問題です。詰襟にして、しかも裾を短く、広く、海軍の水兵の外套に似せてなほ工夫すればよろしい。国民服についても同様のことが云へると思ひます。
 こんなことを仰々しく取りたてゝ云ふわけではありませんが、かういふ無頓着さが、近頃は、だんだん目に余つて来て、「身嗜み」といふ点から、現代の日本人の「嗜み」を判断されたら、まつたく冷汗ものであります。しかし、一国の文化の程度は、かういふところからも推測し得
前へ 次へ
全67ページ中30ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
岸田 国士 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング