に引戻して考へねばなりませんが、今日は既にその必要はないと思ひます。又、乱雑な使用によつて概念が曖昧にされてゐることは、われわれの努力により、これを是正することが出来ると思ひます。
 さて、種々の言葉が広義と狭義の意味を持つやうに、文化も亦自然広狭二義に使ひ分けなければなりません。広義においては、少くとも国民の理想を追究する過程において、作り出して行く生活の表現であると言つてよいかと思ひます。従つてこの国民の精神的能力が文化の基礎になり、国家活動の原動力も国民の文化能力にあると云へるのであります。その意味においては、政治・経済・軍事・外交・産業等凡ての基礎に国民の文化能力が考へられねばなりません。狭義においては、翼賛会で文化部といふ一部門を持ち、又政治経済と並べて文化の新体制が言はれてゐるやうに、職域或は社会機構としての文化部門が考へられますが、それはこの「地方文化新建設根本理念」の中にも挙げてありますやうに、学術・宗教・教育・文学・芸術・新聞・雑誌・放送・出版・体育・娯楽かゝる職域を文化部門と考へて宜しいかと思ひます。
 文化を広狭二つの意味に使ひ分けねば、文化運動を進める上に種々の
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