しました。地方文化運動の根本理念はこれに大体尽きてをり、こゝで私が申上げる必要もないと思ひますが、文化運動の展開につれ、現在の時局並に社会状勢に応じ、種々の問題がこれに挺身してゐられる方々の間から提出されたのであります。これについて私はこの機会に、翼賛会として考へてをりますことを、皆様に申上げておきたいと思ひます。
最初に文化とは何かといふことが、考方によつて当然の疑問となつて起るのであります。これは言葉の概念の問題と思ひますので、軽々に定義づけることは、翼賛会の立場から私としては出来ませんが、しかし既に政府では、政治・経済・文化といふやうに「文化」を法的に使つてゐますし、翼賛会文化部といふ一部門も公に作られてゐます。初代総裁近衛公も、政治・文化・経済の新体制といふ言葉を使つてをられました。このやうに文化といふ言葉が使はれながら、何故概念として尚一般に明瞭りした輪郭を持ち得なかつたかについて、私はこの言葉が日本語として未だ非常にナマな言葉であり、新しい言葉であり、更に他の新造語と同様、非常に乱雑に使はれてゐる結果であらうと思ひます。「文化」を翻訳語として考へれば、その語源である外国語
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