は幾層倍かに高まり、初めて戦に臨み得る体制が整ふわけであります。
 そして、これこそはまさに、国民自らの手で完成すべき大革新であると同時に、また、これが日本人の生活の本来のすがたであり、そこにこそ、ほんたうに日本的な道徳と、科学と、芸術との偉大な根源があるのであります。
 わが遠き歴史が、われわれを教へ導いたのはたしかにそれであります。
 私は、国民の一人として、もう一度、同胞諸君に愬へます。
 われわれが、われわれの力によつて、今直ちになし得る国民としての戦備は、われわれ自身の生活の建て直しであります。
 生産力拡充のために、
 消費の合理的規整のために、
 体力増進のために、
 元気を振ひ起すために、
 そして、それらが、いつまでも続くために、
 生活の単純化、協同化、明朗化を、今すぐに実行しようではありませんか。
 日本人の生活の黎明は、すなはち、わが光輝ある国体の顕現であり、また同時に、八方の敵を慴服せしめる一大威力であることを、お互にはつきり自覚いたさなければなりません。(昭和十六年八月)



底本:「岸田國士全集25」岩波書店
   1991(平成3)年8月8日発行
底本
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